「せっかく作った多言語サイトに全然アクセスが来ない」
そんな悩みを抱える企業の担当者・経営者の方は少なくありません。実は、多言語サイトはただ翻訳するだけでは意味がなく、SEOの観点から正しく設計・制作しなければ、検索エンジンにほとんど評価されないのです。
この記事は、多言語サイトの制作・運用支援を数多く手がけてきたWebディレクターが、実務で得た知見をもとに執筆しています。
「なんとなく多言語化したい」という段階から、「どう作れば成果が出るのか」を具体的に理解したい方に向けた内容です。
本記事では、以下のことを簡潔にまとめました。
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- 多言語SEOで絶対に押さえるべき技術的な前提
- ターゲット国に刺さるキーワードの選び方
- 制作会社の選定基準と費用の現実的な相場
- コストを抑えながら質を担保する制作の進め方
- 多言語SEOに関するよくある疑問への回答
海外への集客を本気で狙うなら、まずはこの記事で「正しい多言語SEO」の全体像を把握しましょう。
◆目次
Toggle多言語SEOの基礎知識と前提条件
多言語サイトでSEO効果を得るためには、制作前に押さえておくべき基本的なルールがあります。これらを無視してしまうと、どれだけコンテンツを充実させても検索エンジンに正しく評価されません。まずは前提となる3つのポイントを確認しておきましょう。
ブラウザ自動翻訳に頼ってはいけない理由
Google Chromeなどのブラウザにはページを自動翻訳する機能がありますが、これはSEO対策にはまったく効果がありません。自動翻訳はあくまでユーザーの画面上で変換されるだけで、検索エンジンのクローラーには日本語のままのページとして認識されます。各言語のページを検索結果に表示させるには、それぞれの言語で独立したページを用意することが必須です。
SEO効果を出すには「物理ページ」の作り込みが必須
多言語SEOで成果を出すためには、言語ごとに独立したURLを持つ「物理ページ」を作成する必要があります。JavaScriptで表示を切り替えるだけの方式や、翻訳プラグインで自動生成したページは、検索エンジンに正しくインデックスされないケースが多くあります。各言語のページに最適化されたコンテンツを個別に用意することが、多言語SEOの基本です。
html lang属性とhreflangタグを正しく設定する
多言語サイトでは、各ページの言語・地域をGoogleなどの検索エンジンに正確に伝えるための設定が欠かせません。「<html lang=”en”>」のようなlang属性に加え、「hreflang」タグを使って「このページはどの国・言語向けか」を明示することが重要です。これらが正しく設定されていないと、せっかく制作した多言語ページが検索結果で表示されないこともあります。
多言語キーワード戦略の立て方
多言語SEOでは、日本語のキーワードをそのまま翻訳して使うのはNGです。国や言語が変われば、ユーザーが検索するワードも変わります。ターゲット市場ごとに改めてキーワード調査を行い、現地ユーザーの検索行動に合わせた戦略を立てることが重要です。
ターゲット国・言語ごとのキーワード調査方法
キーワード調査には、いくつかの便利なツールを活用するのがおすすめです。まずは無料で使える Google キーワードプランナー からはじめてみましょう。より本格的に調査したい場合は、有料ツールになりますが Ahrefs や SEMrush を使うとデータの精度がグッと上がります。
調査の際は、日本全体のデータではなく、ターゲット国に絞って分析するのがポイントです。同じ英語でも、アメリカとイギリスでは検索されるワードが異なることも珍しくありません。
ツールだけに頼らず、現地のGoogle検索を実際に体験してみることもとても有効です。
以下のURLパラメータを使うことで擬似的に現地検索を再現できます。
- 英国:https://www.google.com/?gl=gb&pws=0&gws_rd=cr
- ドイツ:https://www.google.com/?gl=de&pws=0&gws_rd=cr
- アメリカ:https://www.google.com/?gl=us&pws=0&gws_rd=cr
- 日本:https://www.google.com/?gl=jp&pws=0&gws_rd=cr
URL内の「gl=」の後の国コード(2文字)を変えるだけで、さまざまな国の検索結果を確認できます。たとえばフランスなら 「gl=fr」、オーストラリアなら「gl=au」といった形です。サジェストに出てくるキーワードや上位表示されている競合サイトを確認するだけで、現地ユーザーのリアルな検索意図が見えてきます。
また、URLに含まれる「pws=0」はパーソナライズ検索をオフにする設定で、自分のアカウント情報に影響されないニュートラルな検索結果を見ることができます。キーワード調査の精度を上げるためにも、この設定はぜひ活用してみてください。
「検索ボリューム」と「競合性」を軸にキーワードを選ぶ
キーワードを選ぶ際は、「どれだけ検索されているか(検索ボリューム)」と「上位表示の難易度(競合性)」の2軸で評価することが基本です。
特に作ったばかりの新規サイトの場合、競合性の高いビッグキーワードよりも、ミドル〜スモールキーワードを狙う戦略が現実的です。ニッチなキーワードでも着実にトラフィックを積み上げることで、安定した集客につながります。
以下の表のような4つのパターンに分類できます。
| タイプ | 検索ボリューム | 競合性 | 新規サイト向け? | 例・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ビッグキーワード | 高い | 高い | 非推奨 | 大手サイトが上位を独占。勝ち目が薄い。 |
| ブルーオーシャン | 高い | 低い | 理想(レア) | 見つけたら即ねらうべき。ただし滅多にない。 |
| ミドルキーワード | 中程度 | 中程度 | おすすめ | 狙いやすくトラフィックも確保しやすい。 |
| スモールキーワード | 低い | 低い | 特におすすめ | 1本では少ないが、複数積み上げることで安定集客につながる。 |
結論、競合性の高いビッグキーワードを正面から狙うのは現実的ではありません。
まずはミドル〜スモールキーワードを複数組み合わせて、着実にトラフィックを積み上げていく戦略が効果的です。
たとえば「多言語サイト 制作」よりも「多言語サイト 制作 中小企業 費用」のように、より具体的な複合キーワード(ロングテールキーワード)を意識して選ぶと、競合が少ないうえに購買・問い合わせ意欲の高いユーザーにリーチしやすくなります。
直訳NGワードに注意——ネイティブ目線でのキーワード精査
日本語のキーワードを単純に英語などに直訳しても、現地ユーザーが実際に使う表現と異なる場合があります。たとえば以下のような「直訳NG」の例は実務でよく見られます。
| 日本語 | 直訳(NG) | 現地で使われる表現 | 理由 |
|---|---|---|---|
| アフターサービス | After service | Customer support / After-sales service | 和製英語。英語圏では通じない。 |
| リフォーム | Reform | Renovation / Remodeling | 英語の”reform”は「改革」の意味。 |
| ワンルーム | One room | Studio apartment | 英語圏では”studio”が一般的。 |
| フリーダイヤル | Free dial | Toll-free number | 和製英語。”Free dial”は通じない。 |
可能であれば現地のネイティブスタッフや翻訳専門家にキーワードの自然さを確認してもらうことが理想です。
ネイティブへのアクセスが難しい場合は、ChatGPT や Claude に「このキーワードは○○(国名)のユーザーが実際に検索する自然な表現ですか?より一般的な言い回しがあれば教えてください」と尋ねることで、一次確認として活用できます。
多言語サイト制作の進め方と費用感
多言語サイトの制作は、通常のWebサイト制作よりも考慮すべき要素が多く、パートナー選びが成否を左右します。ここでは、制作会社の選び方から費用の目安、コストを抑えるための方法まで、実際に発注する前に知っておきたいポイントをまとめています。
自社に合った多言語サイト制作会社の選び方
多言語サイトの制作会社を選ぶ際は、「SEOの知識があるか」「翻訳品質の担保ができるか」「実績・事例が豊富か」の3点を確認しましょう。
単なる翻訳会社やデザイン専門の制作会社では、SEO対策が不十分になるケースがあります。
打ち合わせや見積もりの際には、以下の質問を投げかけてみると、会社の実力を見極めやすくなります。
- 「hreflangタグの設定・管理まで対応できますか?」
- 「言語ごとに独立したURLを持つ物理ページで制作していますか?」
- 「翻訳はネイティブチェックまで含まれていますか?」
- 「多言語サイトのSEO改善実績を事例で見せてもらえますか?」
これらの質問にスムーズに答えられる会社は、多言語SEOの実務に慣れている可能性が高いです。逆に答えに詰まるようであれば、SEO対策は別途専門会社に相談することも検討しましょう。
多言語サイト制作の費用相場と料金内訳
多言語サイトの制作費用は、対応言語数やページ数、SEO対策の範囲によって大きく異なります。一般的な目安としては、2〜3言語対応のコーポレートサイトで100万〜300万円程度が相場です。
費用の内訳は、デザイン・コーディング・翻訳・SEO設定などで構成されており、ページの制作方法、言語別デザイン調整の有無、翻訳の質によってもコストが変動します。
コストを抑えるための現実的な方法とは
多言語サイトの制作費用は、工夫次第でかなり抑えることができます。
最初から完璧を目指さず、優先度をつけて段階的に進めるのがポイントです。
具体的には以下の4つの方法が効果的です。
① まずは主要ページだけ多言語化する
最初から全ページを多言語化しようとすると、費用も時間も膨大になります。最初は以下のページに絞るのが現実的です。
- トップページ
- サービス・製品紹介ページ
- お問い合わせページ
- 会社概要ページ
効果を見ながら、反響のあった言語・ページから順番に拡充していきましょう。
② 翻訳は「ポストエディット方式」を活用する
翻訳をすべて人力で行うと費用がかさみます。おすすめは、機械翻訳・AI翻訳+ネイティブチェックを組み合わせた「ポストエディット方式」です。
- 機械翻訳(ベース):DeepL や Google翻訳 を活用してドラフトを作成
- AI翻訳・校正(精度アップ):ChatGPT や Claude に「自然な表現に整えて」と指示することで、機械翻訳の不自然さを修正
- ネイティブチェック(仕上げ):クラウドソーシングや翻訳会社で最終確認
特にAIツールは、「この翻訳を現地のビジネスシーンで使われる自然な表現に直して」といった具体的な指示を出すことで、精度の高い修正案を素早く出力してくれます。
また、翻訳対象となる箇所の前後の文脈も併せて読み込ませることもポイントです。
全文を翻訳会社に依頼するより、コストを30〜50%程度削減できるケースもあります。
③ CMSの多言語プラグインを活用する
WordPressを使っている場合、多言語対応プラグインを活用することでシステム開発コストを下げられます。
ただし、プラグイン任せにするとSEO設定が不十分になるケースもあるため、hreflangの設定などは必ず確認しましょう。
④ 対応言語は1〜2言語からスタートする
最初から5言語・10言語に対応しようとせず、ターゲット市場を絞って1〜2言語からスタートするのがおすすめです。費用対効果を検証しながら、成果が出た言語から順番に拡張していくのが現実的な進め方です。
多言語SEOについてよくある疑問
多言語サイトの制作・運用を検討していると、さまざまな疑問が出てくるものです。ここでは、弊社のお客様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
サブドメインとサブディレクトリ、どちらがSEOに有利?
Googleは公式に「どちらでも評価に差はない」としていますが、実務的にはサブディレクトリ(例:example.com/en/)の方が有利とされるケースが多いです。理由は、メインドメインのSEO評価を言語別ページにも引き継ぎやすいためです。新規でサイトを構築する場合は、特別な理由がない限りサブディレクトリ構成を選ぶとよいでしょう。
翻訳コンテンツはGoogleに「重複コンテンツ」と見なされる?
異なる言語に翻訳されたコンテンツは、Googleの重複コンテンツには該当しません。ただし、同じ言語で内容がほぼ同じページが複数存在する場合は問題になります。hreflangタグを正しく設定することで、各ページが「同一コンテンツの言語違いバージョン」であることをGoogleに明示でき、重複と誤認されるリスクを防ぐことができます。
多言語SEOの効果が出るまで、どのくらいかかる?
多言語SEOの効果が表れるまでには、一般的に3〜6ヶ月程度かかると考えておきましょう。これは通常の日本語SEOと同様で、検索エンジンがページをクロール・インデックスし、評価を積み上げるのに時間がかかるためです。早期に効果を出すためには、公開直後からサーチコンソールでのインデックス登録申請や、被リンク獲得の施策も並行して進めることをおすすめします。
まとめ
この記事では、SEOに強い多言語サイトを制作するために必要な知識と手順を解説しました。最後に要点を整理しておきましょう。
- ブラウザ翻訳はNG:言語ごとに物理ページを用意し、html lang属性・hreflangタグを正しく設定することが大前提です。
- キーワードは現地調査が必須:日本語をそのまま直訳せず、ターゲット国の検索データをもとに、ミドル〜スモールキーワードを中心に選定しましょう。
- 制作会社選びは「多言語SEOの実績」で選ぶ:翻訳だけでなく、SEO設計まで対応できるパートナーを選ぶことが成果への近道です。
- コストは段階的に抑えられる:主要ページから着手し、ポストエディット方式やプラグインをうまく活用することで、費用を抑えながら品質を担保できます。
- 効果が出るまでには3〜6ヶ月を見込む:公開後もサーチコンソールでの管理や被リンク施策を並行して進めることが重要です。
多言語SEOは、正しい手順で取り組めば中小企業でも十分に成果を出せる施策です。「まず1言語・主要ページだけ」という小さな一歩から始めてみてください。
多言語サイトの制作や戦略立案についてお悩みの方は、ぜひ弊社へもお気軽にご相談ください。
