多言語SEOで最も重要なのは「ドメインの構造」です。
どれほど優れたコンテンツや内部対策をしていても、ドメイン構造を誤れば、検索エンジンはその言語ごとのターゲット地域やコンテンツの関連性を正しく評価できません。結果として、検索順位が上がらず、現地ユーザーに届かないサイトになってしまうことも。
本記事では、国別ドメイン(ccTLD)・サブディレクトリ・サブドメインといったドメインの選択肢の違いや、それぞれの特徴を比較しながら「多言語SEOにおいて最も効果的なドメインの選び方」を解説します。
◆目次
Toggle1. 【目的別】多言語SEOに対応するドメインの選び方
多言語SEO対策のためには、サイト制作の前にドメイン構造を自社の目的に応じて選定する必要があります。
以下のように、事業方針や運用体制に合わせて選ぶことが、多言語SEOの成果に直結します。
①「国ごとに独立したブランド展開をしたい」=> 国別ドメイン(ccTLD)*例:example.us
②「サイト全体のSEO効果を最大化したい」=> サブディレクトリ *例:example.com/us/
③「国や部署ごとに運用を分けたい」=> サブドメイン *例:us.example.com
それぞれの選択肢について、詳しく解説していきます。
①国別ドメイン(ccTLD)
特徴
- 各国向けに完全に独立したサイトとして扱われる
- Googleが地域ターゲティングを明確に認識できる(SEO的に有利)
- ブランド信頼性が高く、現地ユーザーに好まれる傾向
向いているケース
- 各国ごとにマーケティングや商品戦略が異なる場合
- 現地法人があり、それぞれの市場で独立した施策を行いたい場合
- 法的・規制上、現地ドメインの取得が有利または必須な業界
注意点
- 国ごとにサーバー・SSL・ドメイン管理が必要となり、コストと手間がかかる
- 各サイトごとにSEO評価が分散するため、運用力が求められる
②サブディレクトリ
特徴
- ドメイン評価を一元化できる(SEO上、リンクの分散を防げる)
- Google Search Consoleで「地域ターゲット」の設定が可能
- 管理・保守コストが比較的低い(WordPressなどでも対応しやすい)
向いているケース
- 各言語ページの構造が似ており、1つのCMSで一括管理したい場合
- ドメインのパワーを各言語ページに集約させたい場合
- スタートアップや中小企業など、運用リソースが限られる場合
注意点
- 地域向け訴求力はccTLDより弱い傾向(とくにヨーロッパ圏)
- 技術的にURL設計を誤るとSEO効果を損ねることもある
③サブドメイン
特徴
- CMSやサーバーの分離が容易で、大規模運用に向いている
- 一定の独立性があるため、ABテストやリダイレクト設計に柔軟性
向いているケース
- 海外子会社やローカルパートナーとサイトを分担運用する場合
- 技術要件上、CMSが国別に分かれている場合(例:WordPress + HubSpotなど)
注意点
- Googleはサブドメインを別サイトとして評価する傾向があるため、SEO的にはドメインパワーが分散しやすい
- Search Consoleへのプロパティ登録はサブドメインごとに必要
2. 多言語SEOの基礎知識
ドメインとは、Webサイトの住所のようなもので、インターネット上でサイトを識別するために使われます。
多言語SEOに利用される各ドメインの前提条件
多言語SEOに対応させるサイトでは、この「ドメインの構造」が検索エンジンにとって非常に重要な意味を持ちます。なぜなら、Googleなどの検索エンジンは、ドメインの種類や構成から、そのページが「どの国・どの言語のユーザー向けなのか」を判断しているからです。
項目 | 国別ドメイン (ccTLD) |
サブディレクトリ | サブドメイン |
---|---|---|---|
URLの例 | example.us | example.com/us/ | us.example.com |
SEO評価 (検索エンジンの評価の蓄積) |
強いがサイトごとに分散 | 集中しやすい | 分散しやすい |
Googleの認識 (地域・言語の判断) |
地域向けサイトと明確に認識 | 手動で設定が必要 | 別サイト扱いになりやすい |
ブランド印象 | 「現地企業らしさ」が出やすい | 本社と一体感がある | やや中途半端な印象も |
運用の手間 | 高い(国別で分ける必要) | 低い(一元管理しやすい) | 中程度(ある程度分離可能) |
CMS管理 (WordPressなど) |
完全に分かれる | 一つのCMSで管理可能 | 分けても一体でも可 |
サーバー構成 | 国別に分ける場合が多い | 1つのサーバーでOK | 複数サーバーも対応しやすい |
おすすめ用途 | 本格的な海外展開 | 小〜中規模の多言語対応 | 国別に運用チームが分かれる場合 |
なぜドメイン構造が多言語SEOに影響するのか?
検索エンジンは、ドメインの構造から「どの言語・地域向けのページか」を判断します。そのため、ドメイン設計 = 検索エンジンへの言語と地域の明示という重要な意味を持ちます。例えば、本来はアメリカ国内に住むユーザー向けにコンテンツを発信したいのに、ドメインが「example.jp(日本の国別ドメイン)」になっているケースでは、Googleはそのサイトを「日本向け」と認識してしまいます。
その結果、いくら英語でコンテンツを用意しても、現地の検索結果にうまく表示されず、ターゲットに届かないということが起こります。これは、多言語SEOにおける「ドメイン構造の重要性」を象徴する失敗例の一つです。
ドメイン以外に検索エンジンが見ているポイントを理解する
多言語SEOを実施したいサイトを運営するうえで重要なのは、「ユーザーに見せたい言語や地域」と「検索エンジンが理解している内容」が一致していることです。その一致を判断するために、Googleなどの検索エンジンは主に以下のようなポイントを見ています。
hreflangタグの有無(超重要)
検索エンジンに対して「このページはどの言語・どの国向けか」を正しく伝えるためには、hreflangタグの実装が不可欠です。これがないと、異なる言語ページ間の関連性が認識されず、重複コンテンツ扱いになるリスクもあります。
言語とメタ情報の一致(重要)
検索エンジンはHTML構造からも判断を行います。このHTMLの構造やメタ情報を総合的に解析して「どの言語・どの国向けか」を判断します。ここが一致していないと、評価が正しく付かずに検索順位が伸びない原因となります。
サーバーの位置やローカル情報
現在ではそこまで重視されていませんが、サーバーの物理的な設置場所やローカルな住所・電話番号の記載なども、地域判定の補助要素になります。
ツールを使った機械翻訳・自動翻訳はあり?
多言語SEOが目的なら「なし」が原則です。
多言語サイトの制作において、外部ツールなどを活用した自動翻訳ツールを使えばコストや手間を減らせるように見えます。しかし、SEOで成果を出したいなら、それは避けるべき手段です。
理由は大きく分けて3つあります。
①自動翻訳ツールを利用するとインデックスされにくいから
多くの自動翻訳ツールは、JavaScriptを使ってページ上で動的に翻訳を表示しています。これは「擬似的な翻訳表示」にすぎず、実際のHTMLには翻訳後の内容が反映されていないため、検索エンジンのクローラーはその翻訳済みのコンテンツを正しく読み取ることができません。
その結果、検索エンジンにインデックスされにくくなり、SEO評価の対象外となるリスクがあります。
②ターゲット地域の“検索意図”にマッチしないから
機械翻訳は直訳的な処理が中心であり、地域特有の言い回しや文化的なニュアンスを捉えることができません。また、文脈の把握が苦手なため、ページ全体で表現や用語が統一されていなかったり、内容に一貫性がないという問題も生じやすくなります。
このようにして検索キーワードと表現がずれることで、検索にヒットしにくくなり、結果としてSEO効果が大きく損なわれます。
③ユーザー体験(UX)が低下し、直帰率・離脱率の悪化に直結するから
自動翻訳では、不自然な言い回しや意味不明な文章が生成されることが多く、ユーザーに強い違和感を与えます。信頼性を損ない、「読む価値がない」と判断されてすぐにページを離脱されることで、直帰率や離脱率の悪化につながり、Googleからの評価も低下する要因になります。
結果として、検索順位が下がる、またはそもそも上がらない、という悪循環が生まれてしまいます。
サーバーの場所は関係ある?
最近は必ずしも必要ありません。
公式にはサーバのIPアドレスを元に判断するとされていますが、現在はあまり意識しなくてもいいと思います。昔は「現地に近いサーバーの方が早い」と言われていましたが、近年ではクラウド環境の普及に伴い「大部分はccTLDとSearch Consoleの設定を利用しているため、サーバの場所は最適に」とも言われています。
それよりも一番重要なのは、ユーザーがサイトにアクセスするときの対応スピードとなります。
Googleもページの表示速度を評価基準(Core Web Vitals)としているため、物理的にどこにサーバーがあるかよりも、ユーザーがサイトを開いたときにすぐ表示されるかどうかが重要視されるようになっています。
つまり、「サーバーの場所」は以前ほど重視されなくなっており、実際にユーザーが快適に使えるサイトになっているかどうかのほうが、検索順位にも影響するということです。特に海外向けサイトでは、画像のサイズや読み込みスピードなど、基本的な表示の速さを意識することが大切です。
3. ドメイン選択の判断ポイントは?
自社の海外事業への現状の期待値、可能な投資レベルによってドメインの選択方法を決めることをおすすめします。
まず最初に確認すべきは、多言語SEOを実施したい「地域が決まっているのか?」どうかです。
地域が明確に決まっている場合(例:アメリカ市場に特化)
この場合、検索エンジンにその地域向けであることを明確に伝える必要があるため、地域ターゲティングに最も強い、国別ドメイン(ccTLD – example.us)の使用が理想的です。現地ユーザーにとっても「ローカルな企業」という印象を与えやすく、クリック率や信頼性も向上しやすいのが特長です。
地域は決まっていないが、将来的に多言語対応を広げたい場合
この場合、サブディレクトリ(example.com/us/)が最も柔軟性が高く現実的です。既存ドメインのSEO評価を活かしつつ、将来的に他言語を増やす際にも一元管理がしやすく、コスト面・運用面でも効率的です。
運用体制やCMSが国ごとに異なる場合
例えば、国ごとに異なるCMSを利用している、あるいはマーケティングチームが国別に独立しているといった場合には、サブドメイン(us.example.com)の方が向いています。もし地域が明確に決まっているのであれば、国別ドメイン(ccTLD – example.us)でも問題ありません。