コラム詳細

製造業の海外展開を左右するSTP分析の極意

執筆者

菅宮 道晴
Sugamiya Michiharu

BizX株式会社 代表取締役

日本の上場IT企業にて海外展開、事業開発・推進に従事した後、東南アジアを中心としたBtoB企業向けにデジタルマーケティング支援企業を創業。多言語対応のWEB制作やSEO・広告戦略を強みとし、製造業・卸売業・サービス業など多様な業種に対して、現地市場に即したマーケティング戦略を提供している。自身も活動のベースをベトナムやタイを中心とし、ASEAN市場への進出を図る日系企業の成長を支援している。

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製造業の海外展開は、一筋縄ではいきません。日本国内では売れる製品、サービスでも、現地では無名の存在として、多数の競合と正面からぶつかることになります。認知度が低く、差別化が図れないままでは、どれほど優れた製品でも市場で埋もれてしまうでしょう。

そこで求められるのが、現地の市場特性や顧客ニーズを的確に捉えた戦略設計です。本記事では、STP分析を通じて「狙うべき市場」と「自社の立ち位置」を事前に明確化し、海外展開の成功確率を高める方法を解説します。

1. STP分析とは

STP分析は、市場をセグメンテーション(市場の細分化)、ターゲティング(ターゲット市場の選定)、ポジショニング(自社の立ち位置づけ)の3つのステップで捉え直し、自社にあったマーケティング、営業戦略を構築するためのフレームワークです。

  1. セグメンテーション(市場の細分化)

    • 地理的条件(国・地域、都市 vs 郊外)

    • 業種・用途(自動車部品向け/家電向け/産業機械向け など)

    • 顧客規模(大手OEM vs 中小サプライヤー)

    • 購買行動(大量一括購入 vs カスタム少量)
      これらの切り口で市場を分けることで、異なるニーズや購買態度を把握しやすくなります。

  2. ターゲティング(ターゲット市場の選定)

    • セグメントごとの市場規模・成長性・競合状況を評価

    • 自社リソース(生産能力、技術力、サプライチェーン対応力)と照合

    • 優先度の高いセグメントを1~2つに絞り込み、重点的にアプローチ
      例えば、技術コストを許容する大手自動車メーカー向け部品セグメントを攻める、など。

  3. ポジショニング(自社の立ち位置づけ)

    • ターゲットに対し、自社が提供する独自価値(USP)を明確化

    • 価格戦略、品質保証、アフターサポートなど訴求ポイントを定義

    • 競合他社との差別化メッセージを発信
      例)「高精度かつ短納期のカスタム金型提供」「現地法人による24時間体制の技術サポート」など

*出展国の検討、選定に参考になる記事はこちら

2. STP分析ができると何が良いのか?

STP分析を通じて現地市場のセグメントや顧客ニーズが明確になると、展示会やイベントへの出展やWEBマーケティングを活かした集客施策などが格段に効果的になります

展示会を活用した際に現地ニーズの調査がしやすくなる

STP分析で「どの市場」「どの顧客層」を狙うかが定まれば、出展すべき展示会やイベントも明確になります。適切なセグメントにフォーカスした展示会に参加することで、潜在顧客やパートナー候補と直接対話でき、製品への率直な反応や改善要望をリアルタイムで収集可能です。実際に手に取ってもらいながら得られるフィードバックは、オンライン調査では得られない具体性をもち、次期製品開発や販売戦略のブラッシュアップに即つなげられます。

WEBを活用したテストマーケティングによって投資リスクを最小化できる

さらに、STP分析で抽出したターゲット層に向けて、Web広告やランディングページを活用したテストマーケティングを実施すると、投資前に顧客の関心度や適正価格帯を把握できます。例えば、複数パターンのメッセージやオファーをA/Bテストすることで、どの切り口が最も反応率を高めるかを定量的に検証可能です。この結果を基に本格投入時の広告費や開発コストを最適化すれば、無駄な投資を抑制しながら効果的な海外展開を実現できます。

3. アジア市場でのターゲティングはとにかく“絞り込む”ことが秘訣

アジアは国・地域ごとに市場構造や文化、購買行動が大きく異なるため、ターゲットを広く設定するとリソースが分散し、メッセージも埋もれてしまいます。そのためSTP分析の「T(ターゲティング)」においては、以下の観点でセグメントを徹底的に絞り込みましょう。

小規模テストマーケティングで仮説を素早く検証する

STP分析で設定した「誰に」「何を」を短期間で試すため、まずはリード獲得施策を複数並行実行しましょう。

  • WEB広告+L P:ターゲット企業のキーマンを想定したメッセージでリスティング広告を実施し、ホワイトペーパーDLや問い合わせフォームで反応を計測。

  • 展示会サンプル配布:想定顧客が集まる小規模展示会に出展し、試作品を手渡してフィードバックをヒアリング。

  • LinkedInダイレクトDM:ターゲット企業リストを作成し、製品価値やPoC(概念実証)提案を個別に送付して興味度を数値化。
    これらを1〜2週間スパンでローテーションし、「どのチャネルで」「どの訴求で」最もリード獲得効率が良いかをデータで見極めます。初期仮説との乖離があれば即座に訴求ポイントやターゲットを再調整し、無駄な投資を防ぎます。

競合の少ないニッチ市場で初速の販売実績をつくる

海外展開では、まず「最初の1件」を獲得することが極めて重要です。現地企業は何よりも「本当に売れている製品か」を重視するため、ニッチな領域で実績を積み上げることで信頼性を一気に高められます。加えて、ローカル営業担当者にとっても、実際に売れている製品を扱うほうが商談がスムーズに進み、追加受注につながりやすくなります。

ローカルパートナー活用は直販で成果を示してから交渉力を高める

多くの現地代理店は「売れるか分からない新製品」を扱うことに慎重です。一方で、海外企業からは「(この国で売れるか分からないけれど)ぜひ扱ってほしい」という依頼も少なくありません。そこでまず、自社の直販チャネルで1件でも契約を獲得し、実績事例を用意しましょう。

直販による成功実績は「この製品は市場で評価されている」という強力な証拠となり、パートナーとの交渉をスムーズに進めるカギになります。さらに、自社が現地コミットメントを本気で行う姿勢を示すことで、代理店もテストマーケティングを代替するリスクを負わずに協業に前向きになってくれます。

4. 競合調査を“徹底的”に行い自社の立ち位置を明確にしないと売れない

現地企業だけでなく多国籍メーカーやローカルの中小サプライヤーまで、想像以上に多様な競合がひしめいています。

アジア市場では、価格訴求型の競合が多く、日本企業は品質特化型で勝負せざるを得ないケースが大半です。しかし、品質の違いは顧客に伝わりにくく、同等製品の価格の開きが1.5倍以上になると、ほとんど売れなくなるのが実情です。

したがって、現地の競合動向を表面的に調べるだけでは不十分で、価格帯からサポート体制まで徹底的に比較・分析しないと、投入後に想定外の苦戦を強いられる可能性が高まります。毅然としたポジショニングを確立するためにも、日本国内からの限られた情報だけに頼らず、現地現場での深掘り調査を必ず実施しましょう。

競合比較すべき項目11選

以下の視点で競合他社を徹底的に比較・分析しましょう。これらの比較項目をExcel等に整理し、定量・定性データを併せて可視化することで、自社の最適なポジショニングを明確にできます。

  1. 価格レンジ・価格体系

    • 基本単価、割引率、追加オプション価格

  2. 製品スペック・機能差異

    • 性能指標(精度、耐久性、エネルギー効率など)

  3. 品質保証・認証

    • ISO、UL、CE、ハラール認証などの取得状況

  4. 納期・リードタイム

    • サンプル提供から量産納品までの日数

  5. アフターサービス・サポート体制

    • 保守契約内容、技術対応時間、現地拠点有無

  6. 導入実績・市場シェア

    • 成約件数、主要顧客リスト、シェア率

  7. ブランド信頼性・評判

    • ローカルでの口コミ、オンラインレビュー、業界紙掲載状況

  8. 流通チャネル・販路網

    • 直販 vs 代理店網、オンライン販売の有無

  9. マーケティング・プロモーション手法

    • デジタル広告、展示会出展頻度、セミナー開催実績

  10. 支払条件・柔軟性

    • 前払金、分割払い、与信枠設定の可否

  11. カスタマイズ対応力

    • 設計変更、OEM/ODM受託の可否とコスト

まとめ

製造業の海外展開成功には、STP分析で市場を細分化し、最適なターゲットを絞り込むことが不可欠です。まず小規模テストで仮説を検証し、ニッチ市場で「最初の1件」を獲得。直販実績を元にパートナー交渉力を強化し、徹底的な競合調査で自社の立ち位置を明確化すれば、価格競争が激しいアジア市場でも効率的に成果を上げられます。これらを順序立てて実践することで、リスクを抑えつつ海外進出の成功確率を大幅に高めることができます。

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