著しい経済成長を遂げるベトナム市場では、多くの日系企業がBtoB(企業間取引)領域での販路拡大を目指しています。
しかし、従来の紹介や展示会頼みの営業スタイルに限界を感じ、効率的な商談機会創出の手段として「WEBサイトの戦略的活用」が注目されています。
現地企業やバイヤーの情報収集はオンラインが主流となり、「信頼できる企業か」はまずWebで検索・確認される時代です。特にBtoB分野では、会社概要、製品情報、導入事例、問い合わせフォームなどを整備した“営業型WEBサイト”が、無形の営業マンとして機能します。
本記事では、ベトナム市場でBtoB営業を強化したい企業向けに、WEB制作の役割、注意点、成功事例を整理し、成果に繋がる活用法を解説します。
◆目次
Toggleベトナムでの集客にWEB制作は必須!
急成長ベトナム市場で問われる“営業のかたち”
ベトナムは東南アジアで特に成長著しい市場です。2023年のGDP成長率は5.05%(出典:World Bank)と高水準を維持。
若年層中心の人口構成、積極的な外国直接投資(FDI)誘致、国家的なデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が、ビジネス環境を急速に進化させています。
この変化に伴い、BtoB営業の常識も変わりつつあります。対面や人脈営業は依然主流ですが、情報収集段階では企業サイトやオンライン資料、SNSが意思決定に大きく影響します。
つまり、第一印象は「営業担当者」でなく「Webサイト」で決まる時代。現地企業との商談獲得には、信頼されるデジタル上の顔=企業サイトが不可欠です。
- ポイント:市場成長、若年人口、DX化政策を背景に、情報収集行動が変化。
ベトナムBtoB営業の現場で起きていること
ベトナム進出日系企業の多くが「現地企業との商談機会が得られない」という課題に直面しています。
見込み顧客からの問い合わせがない、アポが取れないといった声は少なくありません。
背景には、文化・商習慣の違いに加え、「信頼性の可視化」の不足があります。ベトナムでは初対面の企業に慎重な傾向が強く、名刺交換や対面だけでは企業の実力や実績が伝わりにくいのが現実です。
「Webサイトがない、または更新されていない=信頼性に欠ける」と見なされることも増加。現地企業担当者は事前にWebで情報を確認し、問い合わせる価値があるか判断します。
また、営業を現地スタッフや代理店に依存する場合でも、説得力あるWebコンテンツがないと営業現場で苦労し、機会損失に繋がります。
BtoB営業現場では「Webの有無」「営業資料としての機能」がリード獲得を左右する時代なのです。
- ポイント:商談獲得の壁、Webサイト不在による信頼性リスク、ローカル連携の課題。
ベトナムでWEB制作を進める際の5つの注意点
1. 「日本本社WEBの翻訳」では成果は出ない
「本社の日本語サイトを翻訳すれば良い」という判断は陥りがちな落とし穴です。
翻訳だけではベトナム市場で成果を出すには不十分です。
ベトナムの企業担当者はWebサイトから「何をしている企業か」「自社にどう役立つか」を瞬時に判断します。
そのため、単なる言語変換でなく、「何を、どの順で伝え、どう問い合わせに繋げるか」という戦略的設計が不可欠です。
日本語特有の表現や冗長な文章は現地ユーザーに読みづらく、離脱の原因に。モバイル閲覧が主流のベトナムでは、情報の簡潔さと視認性が重要です。
ベトナム向けWebサイトは「翻訳」ではなく、「現地最適化された新規設計」が基本と考えましょう。
2. ローカル制作会社を利用する場合、自社の対応範囲を明確に
ベトナムでWEB制作を外部委託する際、現地制作会社の選定が成否を分けます。
「安いから」「日本語が通じるから」という理由だけで選ぶと、品質や運用面で問題が残る可能性があります。
まず確認すべきは、制作会社の対応領域と自社の役割分担です。フル外注か、構成・原稿は自社で用意しデザイン・実装のみ依頼する共同運用型かで、プロジェクト進行は大きく異なります。
言語面のコミュニケーションも重要です。日本語対応可能なディレクターの有無、日系企業との取引実績を確認すると安心です。
制作後の保守・運用サポートの有無も見逃せません。公開後の修正、セキュリティ対応、アクセス解析や改善提案まで、どこまで支援してくれるか事前に明確にすることが、継続的な成果獲得の鍵です。
3. ターゲットを明確にし、自社の強み・ポジションを再確認
効果的なWEBサイト制作には「誰に情報を発信するか」というターゲット明確化が必須です。
ベトナムでは意思決定者が限られた情報から迅速に判断する傾向があるため、誰に何を訴求するか絞り込むことが成果への近道です。
ターゲットが明確になれば、自社の「強み」や「選ばれる理由」も再確認できます。製造業なら技術力や納期対応、商社なら調達力やネットワークなど、業種ごとの訴求ポイントを整理しましょう。
ターゲットごとに専用ページ(業界別ページ、業務別ソリューションページ等)を設ければ、訪問者の関心に応じた情報提供が可能です。これはSEO効果だけでなく、営業現場での説明ツールとしても有効です。
WEB制作は単なる“会社紹介”でなく、「ターゲットと強みをつなぐ設計図」と捉えることが重要です。
4. ユーザーが求める情報を掲載する
ベトナム市場向けWEBサイトでは、企業視点だけのページ構成ではユーザーの関心を引けません。
相手が知りたい情報を的確に掲載することが重要です。
現地企業担当者が求めるのは、「どんなサービス・製品があるか」「どんな企業と取引実績があるか」「導入後のサポート体制は?」といった具体的で実用的な情報です。
これに応えるには、会社概要や製品カタログに加え、導入事例、FAQ、対応業種や用途別の活用例などを掲載するのが効果的。さらに、問い合わせ先がすぐ見つかるよう、ページ下部やサイドバーに「資料請求」「お問い合わせ」「オンライン相談予約」などの導線を分かりやすく設置することも大切です。
営業現場で“資料代わり”に使えるWEBサイトを意識すれば、リード獲得だけでなく、商談化・成約率向上にも繋がります。
5. ダウンロードコンテンツのすすめ
WEBサイトを単なる情報提供の場でなく“営業の起点”として活用するには、ダウンロードコンテンツ導入が非常に有効です。
ベトナムのBtoB市場では、対面商談前に資料請求するケースが増えており、適切なコンテンツは自社理解促進と信頼構築に繋がります。
具体例:
- 製品・サービスのパンフレット(PDF)
- 導入事例や課題解決ストーリー(業種別)
- ホワイトペーパー(業界課題の整理+自社の解決策)
これらは「営業トークの縮図」。事前にダウンロードしてもらえば、問い合わせ段階で一定の理解が得られ、商談化率向上に繋がります。
資料請求フォームでユーザー情報(企業名・業種・興味分野など)を取得すれば、その後の営業活動の質も向上。自動返信メールに追加資料を添付するなど、ナーチャリング(見込み顧客育成)を視野に入れた設計も有効です。
営業担当が「送る資料に悩む」ことなく、常に最新の提案資料をダウンロード形式で案内できる仕組みを整え、Webと営業の連携を強化しましょう。
日系BtoB企業がWEB制作で成功した事例
締結部品商社「オータベトナム」は、進出当初、継続的な商談に繋がらない課題を抱えていました。
そこで、ターゲット業種(例:製造業の資材調達担当者)特化の自社ホームページを構築。製品情報や制作実績を分かりやすく紹介し、「品質管理」「Q&A」「資料ダウンロード機能」を設置。自社のこだわりだけでなく、強みや特徴をWEB上でPRできるようになっています。
結果、WEB経由の問い合わせ数は従来の3倍以上、問い合わせからの商談化率も向上。現地スタッフからも「説明がスムーズになり、初回訪問でも信頼を得やすくなった」と評価されています。
アルミ製品メーカー「大和軽合金ベトナム」は、当初、WEBを活用した新規問い合わせの獲得に懐疑的でした。
そこでまずは「自社の特性と強みを視覚的に訴求するWebサイト」をミニマムで構築。加工用の機械や調達可能な素材などを説明し、ベトナム語・英語・日本語の3言語対応でグローバルな信頼構築も図りました。
結果として、少しづつ問い合わせが増加していったので、コンテンツを拡充していき、自社メディアにて自業界のノウハウ、知識を積極的に発信。営業部門からは「世界中からの問い合わせが増え、対応に追われている」との声が上がりました。
キャストグローバルロウ(専門サービス業)
ベトナム現地に法律事務所を構える「キャストグローバルロウ」は、ベトナム現地の日系企業やベトナム進出を検討する日系企業へ法務サービスや顧問サービスを提供しています。
当初、現地での企業ホームページがない状態でしたが、WEBマーケティングの強化のためにホームページ新規制作を決断。特に注力して展開している法務顧問サービス内容や実績、FAQを現地向けに最適化しました。
また自社メディアの運用も強化しており、定期的な情報発信によりSEO対策(検索エンジンでの上位表示)も順調に進んでいます。
会合やセミナー後のフォローでも「Webで改めて情報を届けられる」体制が整いました。
【まとめ】WEB制作は“営業ツール”である|成功の鍵はローカライズと継続運用
ベトナムのBtoB市場では、営業手法の変化とともに「Webサイト=企業の信頼性を映す鏡」としての役割が急速に高まっています。
対面での第一印象も重要ではありますが、Webでの印象も非常に重要になってきます。
企業の強みや導入実績を的確に伝え、ユーザーの行動を喚起する導線設計がされたWebサイトは、商談数や成約率に直結する“営業ツール”として機能します。
ただし、制作だけで終わっては成果は出ません。公開後のコンテンツ更新、問い合わせ対応、アクセス分析、改善施策のPDCA(計画・実行・評価・改善)を継続することが、競合との差を生み出すポイントです。
WEB制作は「一度きりの投資」ではなく、「営業体制の一部として育て続ける資産」と捉えるべきでしょう。
(参考)ベトナムでのWeb制作費相場表
費用帯(目安) | 主な対応内容 | 想定クライアント | 注意点 |
---|---|---|---|
〜30万円 | テンプレート活用・1〜5ページ程度・簡易フォーム | スタートアップ・小規模店舗 | 汎用テンプレで差別化しづらい/SEO弱い |
30〜50万円 | 基本的な会社紹介+製品紹介ページ・レスポンシブ対応 | 中小企業・現地法人 | 実績・品質を事前確認/翻訳の質に注意 |
50〜100万円 | オリジナルデザイン・多言語対応・導線設計あり | 本格展開を目指す日系企業 | 要件整理不足だと工数増・費用増のリスク |
100〜200万円 | CMS構築・コンテンツ提案・ダウンロード機能追加 | 業界特化・技術製品を扱う製造業 | 公開後の運用設計も含めた体制確認を |
200万円〜 | 企画・設計・UI/UX・SEO・広告連動を一括支援 | 上場企業・複数拠点展開企業 | 制作会社との連携体制・体験価値の設計が重要 |
出典: BizX株式会社 – ベトナムWeb制作会社比較記事 および各社公開資料より編集