ベトナムで営業活動を行う際、現地の文化や商習慣に即したアプローチが不可欠です。
そのなかでも注目すべきコミュニケーション手段が、ベトナム発のメッセージングアプリ「ZALO(ザロ)」です。では、このZALOは実際の営業現場でどのように使われているのでしょうか?本記事では、ベトナム営業におけるZALOの活用タイミングや役割について詳しく解説します。
◆目次
Toggleベトナム営業でZALOは必須で利用される!
結論から申し上げるとベトナムの営業シーンでZALOは必ず利用されています。BtoCだけでなく、BtoBビジネスでのやり取りにおいても利用されています。
見込み客との初回接点でZALOは使えない
ZALOは見込み客との初回接点ではあまり使われません。その理由は、ZALOは「電話番号を交換した相手」とのやり取りに限定されるという仕様にあります。
実際の営業現場では、展示会やセミナー、ネットワーキングイベントなどで対面で名刺交換した後に、相手の電話番号をZALOに登録することで初めてやり取りが可能になります。
つまり、ZALOは「対面での接点獲得後」に初めて活用できるツールという位置づけです。
そのため、Web広告やSNS広告などのデジタル施策によるリード獲得や、営業リストからのテレアポ段階では、Eメールや電話がファーストコンタクトの中心となります。
リード獲得においては日本と変わらないのですが、見込み客とのやり取りがメール経由ではなく、SNSにすぐに移行していくことが特徴的です。
営業プロセスのどのタイミングでZALOが活きるのか?
ZALOが真価を発揮するのは、初回接点後の「関係構築フェーズ」です。
日本企業の営業担当が名刺交換や初回訪問を終えた後、ZALOを通じて継続的な接点を維持することで、信頼関係の構築やニーズ把握が格段にしやすくなります。
特にベトナムでは、メールの既読率が日本よりも低く、返信にも時間がかかる傾向があります。一方、ZALOでのメッセージ送信は、プッシュ通知で即時届きやすく、既読も視認できるため、連絡のテンポが圧倒的に早くなります。
また、ZALOは個人対個人の連絡手段としてカジュアルな雰囲気があるため、営業担当が相手の心理的ハードルを下げるツールとしても有効です。ちょっとしたフォローや資料送付の場面でも「気軽に送れる」点が評価されています。
ZALOは“育成フェーズ”に強い営業ツール
ZALOの最大の特徴は、「即時性」と「親密さ」です。
これは、いわゆるリードナーチャリング(見込み客育成)のフェーズに非常に適しています。
たとえば、展示会で獲得した名刺リストの中でも、すぐに商談化しないリードに対して、ZALOで定期的に製品情報やイベント案内を送ることで、「想起される関係性」を維持できます。
実際、ZALOにはタイムライン機能もあり、友達登録をした相手に対して投稿で情報発信をすることも可能です。
また、ZALOを通じて送られるメッセージには、感情的な距離を縮める力があります。ちょっとした近況報告やスタンプのやり取りを通じて、商談前の関係性づくりにもつながるのです。
まとめると、ZALOは「初回接点の獲得ツール」ではなく、「信頼構築と育成に特化した営業支援ツール」としての役割が非常に強いと言えます。ベトナム市場で営業を成功させるには、このZALOを適切なタイミングで活用する戦略が不可欠です。
ZALOとは?ベトナムにおける圧倒的な存在感
ベトナムにおけるZALOは、単なるメッセージングアプリではなく、生活やビジネスに欠かせない基盤インフラの一部として定着しています。
本章ではZALOの位置付けと他SNSとの違い、そして企業が注意すべきリスクについて解説します。
「SNS」ではなく“生活インフラ”としてのZALO
ZALOは2012年にベトナムのVNG Corporationによって開発されて以降、国民の約80%以上がインストールしている圧倒的な普及率を誇ります。
出典:webcertain.com
日本のLINEに近い役割を果たしつつも、ZALOは「連絡手段」以上の存在です。公共料金の支払いや身分証明書連携、医療予約、行政手続きなど、日常生活の多くをZALO内で完結できることから、「生活インフラ」としての機能が強くなっています。
そのため、多くのベトナム人にとってZALOはメール以上に「必ず使うもの」であり、ビジネス上でも「連絡がつきやすい前提」があるのです。
FacebookやMessengerとの併用実態
ベトナムではZALOの他にもFacebook MessengerやTelegram、WhatsAppなどが使われていますが、個人間の信頼構築や連絡手段としてはZALOが圧倒的に優位です。
Facebookは企業ブランディングや広告、情報収集に強く、MessengerもZALOほどの既読率・即時性はないとされています。そのため、ファーストアプローチや広報にはFacebook、実務連絡や営業フォローにはZALOという住み分けが進んでいます。
特にBtoB営業の現場では、名刺交換後に「ZALOでつながる」がスタンダードになっており、Messenger単独でのやり取りは少数派です。
企業が注意すべきZALOの課題(セキュリティ・情報管理)
ZALOは非常に便利である一方で、企業が使用する際にはいくつかの注意点も存在します。
まず第一に、ZALOはビジネスチャット向けに特化しているわけではないため、個人アカウントでの情報やり取りが主流になります。これにより、退職者との連絡断絶、情報流出リスクなどが生じやすくなります。
また、ZALO内でのファイル送受信は可能ですが、社内でのアクセス権限やバックアップ管理が不十分な場合、機密情報の漏洩や紛失のリスクもあります。
さらに、アカウントの乗っ取りやなりすましといったセキュリティ面の脅威も存在しており、企業としては以下の対策が求められます:
- ZALO利用ポリシーの明文化と社員教育
- ビジネス専用スマートフォンや業務端末での利用推奨
- 重要な情報はクラウドやセキュアなツールに並行保存
これらの配慮により、ZALOの利便性を最大限に活かしつつ、リスクをコントロールすることが可能になります。
ベトナム営業でZALOを活かす具体的な活用法
メールより返信率が高い!ZALOの即時性と信頼感
ZALOの大きな強みは、メッセージの到達スピードと高い返信率です。
メールでは数日経っても返信がないという状況が珍しくないベトナムの営業現場において、ZALOは即時に通知が届き、既読が分かる点が大きなメリットとなります。
また、ZALOはもともと個人利用が中心で、ベトナム人にとっては「友人や家族とつながるツール」としての親しみがあります。その延長でビジネスのやり取りをすることで、メールよりもフランクかつ心理的に距離を縮めやすい傾向があります。
特にテキストだけでなく、スタンプや写真、ボイスメッセージも手軽に使えるため、やり取りの「温度感」を伝えやすく、相手の反応を引き出しやすい点も営業活動において有効です。
リアル接点後にZALOでフォローする活用シナリオ3選
1. 展示会で得た名刺へのアプローチ
展示会や商談会で名刺を交換した後、ZALOで「ありがとうございました」と一言メッセージを送ることで、印象の定着と継続接点の確保につながります。資料や製品情報もZALOで送れば開封率が高く、後日の商談設定がスムーズになります。
2. ビジネス交流会で出会った見込み客のフォロー
軽く話しただけの相手にもZALOを使えば、イベント翌日に「昨日はありがとうございました、また情報共有させてください」といったフォローが可能です。これにより、非公式なつながりから商談へとつなげる糸口を作ることができます。
3. 紹介リードへの初回連絡
ベトナムでは人脈を重視する文化が根強く、知人や既存顧客から紹介されたリードに対してZALOでの連絡を入れると、信頼の土台がすでにある状態でスムーズな応対を得やすくなります。電話やメールよりも心理的障壁が低く、「紹介されたのでご挨拶させていただきました」とZALOでの一報が好印象につながります。
このように、ZALOは「連絡の速さ」だけでなく、「信頼構築のしやすさ」「接点を持続させる柔軟性」に優れており、リアル接点後の営業フォローにおける最適ツールといえるでしょう。
まとめ|ZALOはベトナム営業の“育成フェーズ”でこそ真価を発揮
「初回アプローチ」ではなく「信頼構築」局面で活用
ZALOはその特性上、飛び込み営業やテレアポといった「初回の接触」には不向きです。
しかし、一度対面した顧客や、信頼関係の芽がある相手との“継続的なフォロー”や“温度感の維持”には非常に適したツールです。
タイミングを誤らず、「会ったあとに連絡先を交換」「親近感を得た後にZALOでフォロー」といった流れを守ることで、営業活動全体の成功率が高まります。
ZALOの導入でコミュニケーション速度と親近感を向上
ZALOは、既読確認や即時通知、スタンプやボイスメッセージといった感情を伝えやすい機能が充実しています。
これにより、単なる情報連絡を超えた「人間関係の醸成」にもつながります。
また、ベトナム人にとってZALOは日常的な連絡手段であるため、日本企業がこの文化に寄り添うことで“現地理解のある企業”という好印象を与えることも可能です。
日本企業がZALOを取り入れる際の注意点とは?
一方で、ZALOの導入にはいくつかの注意点があります。特に以下の点には注意が必要です。
- 個人アカウントでの運用に頼りすぎない:退職者による連絡断絶リスクに備え、連絡記録の共有体制が必要です。
- 情報漏洩対策:ファイル共有の際はクラウドリンクを併用するなど、安全性を確保する運用ルールの整備が求められます。
- 現地社員との連携:ZALOを営業に組み込む際は、現地スタッフの協力が欠かせません。相手の文化や言語に通じたフォロー体制を構築しましょう。
ZALOは、ベトナム営業における“顧客育成”と“信頼構築”を円滑に進めるための実践的ツールです。日本企業がその活用タイミングを正しく理解し、文化的背景やリスク管理にも配慮すれば、ZALOは営業活動における強力な武器となるでしょう。
Tips:ZALO営業活用の現場で役立つポイント集
- プロフィール画像・表示名をビジネス向けに整える → 顔写真+日本語/ベトナム語併記で信頼感アップ
- 送信タイミングは“営業日午前中”がベスト → 忙しくなる午後よりも、朝一のタイミングが反応率が高い傾向に
- タイムライン活用で“接触頻度”を補完 → ZALOのタイムライン機能を使って定期的に製品情報や企業ニュースを発信。受け身でも関係が維持できる。