コロナ禍が収束へ向かい、2025年の現在は、日本を訪れる外国人旅行者数は大きく回復し、海外インバウンド需要は観光業界だけでなく、小売・飲食・不動産・BtoBビジネスにまで広がっています。特にアジア圏を中心に訪日客数は前年比で二桁成長を記録し、欧米豪からの長期滞在・高単価旅行者も増加傾向にあります。
本記事では、最新データを元に「国別訪日客ランキングTOP10(2024年版)」をまとめ、各データから読み解きます。
◆目次
Toggle2024年の海外インバウンド需要の全体像
2024年の訪日外国人旅行者数は大幅に増加し、コロナ禍前の水準を超える勢いで回復しました。特にアジア近隣諸国からの短期滞在客に加え、欧米豪からの長期滞在・高単価旅行者がバランスよく伸びています。
この結果、全体の約7割以上をアジア市場が占めつつも、欧米豪の存在感も着実に高まっています。特に 「近距離からの高頻度訪問」×「遠距離からの高付加価値旅行」 という二極化が進んでおり、観光業界だけでなく、地域振興や越境EC、BtoBサービスにも大きな影響を与えています。
全体構成と内訳の特徴
- 国別TOP10が占める比率は全体の約 82.6%。
- 多くの国・地域で観光目的が主流であり、韓国や台湾などは9割以上を観光目的が占めています。
- 一方で、商用目的や技能実習・留学など(分類外目的)の割合が目立つ地域も存在。
例:ベトナムでは「観光・商用以外」の比率が大きく、滞在目的の多様性を示唆しています。
高付加価値旅行と複合目的性
- 近距離アジア市場は“頻度を上げて短期訪問”型が多い一方で、欧米豪は“より長く滞在し、体験や地方観光”を重視する傾向。
- さらに、技能研修、就学、長期滞在(家族訪問など)を目的とする旅行者が一部の国で一定の割合を占め、単なる観光以上の需要が混在。
国別訪日客ランキングTOP10(2024年版)
順位 | 国・地域 | 合計 | 観光 | 商用 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 韓国 | 8,817,765 | 8,452,682 | 185,779 | 179,304 |
2 | 中国 | 6,981,342 | 6,064,115 | 277,983 | 639,244 |
3 | 台湾 | 6,044,316 | 5,867,101 | 93,017 | 84,198 |
4 | 米国 | 2,724,594 | 2,321,497 | 317,850 | 85,247 |
5 | 香港 | 2,683,391 | 2,637,761 | 23,549 | 22,081 |
6 | タイ | 1,148,848 | 1,092,472 | 25,658 | 30,718 |
7 | オーストラリア | 920,196 | 826,114 | 63,147 | 30,935 |
8 | フィリピン | 818,659 | 688,452 | 61,237 | 68,970 |
9 | シンガポール | 691,226 | 662,890 | 23,334 | 5,002 |
10 | ベトナム | 621,173 | 193,117 | 36,066 | 391,990 |
1位: 韓国
2024年は 8,817,765人 が訪日。観光目的が約95%を占める典型的な「短期・高頻度」市場です。LCCの就航増加、円安効果に加え、地方都市・温泉・ショッピング など多様なリピート需要が成長の源泉となっています。
2位: 中国
6,981,342人 が訪日し、前年比で約3倍に。観光目的が8割以上ですが、商用・その他も大きく、MICE需要・留学・技能研修 など幅広い目的が特徴。特に春節の大型旅行需要が全体を押し上げています。
3位: 台湾
6,044,316人 が訪日。観光目的が97%近くを占め、親日度の高さと直行便の利便性が強み。四季折々の観光(桜・紅葉)が特に人気で、地方都市への誘客にも貢献しています。
4位: 米国
2,724,594人 が訪日。観光・商用ともにバランスが良く、商用客は約31万人。1人あたり消費額が高く、長期滞在・文化体験・地方観光が主流。さらに、米国企業とのビジネス渡航も堅調です。
5位: 香港
2,683,391人 が訪日。観光比率が約98%と圧倒的。近距離市場の強みで、週末旅行・家族旅行の需要が目立ちます。円安に伴いショッピング需要も引き続き旺盛。
6位: タイ
1,148,848人 が訪日。観光目的が95%以上を占める一方、商用も2.5万人規模。宗教文化体験・地方観光・買い物と幅広く、日本の地方都市誘客で注目度が高い市場です。
7位: オーストラリア
920,196人 が訪日。観光が9割、商用は6万人規模。スキーリゾートや雪体験が特に人気で、冬季シーズンの安定集客源。長期滞在の傾向が強く、地方観光地にも波及しています。
8位: フィリピン
818,659人 が訪日。観光が約69万人と中心ですが、商用や「その他」(技能実習・留学)も比較的多いのが特徴。家族訪問・教育関連滞在が需要を底上げしています。
9位: シンガポール
691,226人 が訪日。観光比率が96%を超え、富裕層による高付加価値消費が強み。短期休暇でも日本を選ぶリピーターが多く、北海道・九州などリゾート型観光も人気です。
10位: ベトナム
621,173人 が訪日。観光は約19万人と比較的少なく、その他(技能実習・留学など)が39万人以上を占めるのが特徴。他国と異なり「労働・教育目的」の比重が高く、日越間の人材交流やビジネス関係を映し出しています。
インバウンド市場をビジネスに活かすための戦略
インバウンド需要の拡大は、観光・宿泊業界だけでなく、地域企業や中小事業者が海外市場へ直接アプローチできる機会を広げています。特に、訪日客が日本での体験をSNSや口コミで発信することで、海外でのブランド認知・販路拡大にもつながります。
ここでは、デジタルマーケティングを起点にできる具体的戦略を整理します。
1. 市場(国)に合わせた多言語WEB制作
国ごとの特性をみてみると、訴求内容や手法は国によって異なります。
- 韓国・台湾:短期滞在客が中心。SNS連携やモバイル最適化を重視したサイト設計が有効。
- 中国:小紅書(RED)や微信と連動できる中国語サイト+越境ECで購買に直結。
- 米国:ストーリーテリング重視の英語サイト、体験予約のUI強化で高単価客を獲得。
- 東南アジア(タイ・フィリピン・シンガポール・ベトナムなど):LCC就航やVISA緩和を背景に着実成長中。観光だけでなく、留学・技能研修・ビジネス滞在など多目的ニーズがあるため、多言語サイトに加え FAQ・教育情報・就業関連情報 を組み込むことで効果的。
2. 季節イベントに合わせた特設サイト・ランディングページ
訪日客は 桜(3-4月)、紅葉(10-11月)、春節(1-2月) に集中します。
これらのイベントシーズンに合わせた 特設ページ制作・LP公開 を行うことで、SEOとSNS両面で流入を最大化できます。
3. SNSを起点にしたインバウンド集客 × WEB活用
SNSは「認知と拡散」を担い、WEBサイトは「信頼と成果(CV)」を実現する役割を果たします。
- 韓国・台湾:Instagram、YouTube、Facebook。旅行ブログ・動画からの拡散と、公式サイト連動が効果的。
- 中国:小紅書(RED)、抖音(TikTok)が必須。WeChat公式アカウントや特設ミニサイトと連動し、コンテンツを直接配信。
- 東南アジア:TikTok、Instagram、Facebookが三大接点。ショート動画で興味喚起し、Facebook広告から公式LPへ誘導する流れが有効。
- 欧米豪:Google・TripAdvisor・Facebookが定番。特にFacebookイベント機能やレビューは信頼度を高める要素。
ここでのポイントは、SNSは入口(認知のきっかけ)・拡散となり、WEBサイトは信頼・転換(CV) という役割分担となります。
- 季節キャンペーンに合わせて SNS用LPを即時追加
- SNS投稿をサイト内に埋め込み、ソーシャルプルーフ強化
- 広告連動で 訪日直前・訪日中の顧客を囲い込み
など、それぞれの特性を活かしたマーケティング施策を一貫して実施することが重要です。
引用情報
訪日外客統計|JNTO: https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
訪日外客数(2024年12月および年間推計値)|JNTO: https://www.jnto.go.jp/news/press/20250115_monthly.html