コラム詳細

チャイナプラスワンの再評価|米中摩擦と東南アジア製造業への影響(2025/4/15時点)

執筆者

BizX株式会社
マーケティングチーム

BizX株式会社は、日本・ベトナム・タイを中心に、BtoB企業の海外展開を支援するデジタルマーケティング会社です。本コラムは、現地のビジネス事情に精通したマーケティングチームが、東南アジア市場でのWEB活用や集客に役立つ実践的な情報を発信しています。実際の現場で得た経験と知見をもとに、海外進出を目指す企業の皆さまにとって有益な情報をお届けします。

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「うちの会社も、そろそろ海外に目を向けた方が良いのだろうか…?」

近年、日本の中小企業の経営者の方々から、こうした声をお聞きする機会が増えました。特に製造業においては、長年「世界の工場」として頼ってきた中国への一極集中リスクが、無視できない課題となっています。

そんな中、注目を集めているのが「チャイナプラスワン」という考え方。中国に加えて、もう一つ、東南アジアなどに生産拠点を持つ戦略です。しかし、米中対立の長期化や世界情勢の変化を受けて、「チャイナプラスワンって、今からでも本当に有効なの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、2025年4月現在の最新状況を踏まえながら、「チャイナプラスワン」の有効性と、東南アジア製造業のリアルな現状、そして中小企業が取るべき戦略について解説していきます。

【重要】本記事は2025年4月15日時点の情報を基に執筆されています。米中関係や各国の政策、特に関税等の通商環境は日々変化しており、短期間で状況が変動する可能性があります。読者の皆様におかれましては、常に最新の情報をご確認いただくようお願いいたします。

そもそも、なぜ今「チャイナプラスワン」が再び注目されているのでしょうか?

いくつかの大きな変化が背景にあります。

激化・長期化する米中摩擦の現状(2025年4月)

まず大きいのが、米中間の対立です。2024年の米国大統領選挙を経て、両国の関係は依然として緊張感をはらんでいます。関税の応酬だけでなく、半導体などの先端技術をめぐる輸出管理規制の強化、さらには地政学的なリスクも高まっており、サプライチェーンの安定性を脅かす要因となっています。

例えば、特定の部品が米国や中国の規制対象となり、突然調達できなくなる…といった事態も起こり得るわけです。これは、特定の国に生産や調達を依存している企業にとって、非常に大きなリスクと言えるでしょう。

こうした状況は、特にグローバルな部品調達が不可欠な製造業の中小企業にとって、他人事ではありません。

中国国内の変化:コスト構造と事業環境リスク

かつて「世界の工場」と呼ばれた中国ですが、その魅力にも変化が見られます。長年言われてきた人件費の上昇に加え、近年では環境規制の強化、電力供給の不安定化、そして予測が難しい政策変更のリスクなど、事業運営におけるコストや不確実性が増しています。

ゼロコロナ政策が終了し、経済活動は回復しつつありますが、不動産市場の問題や若者の雇用問題など、依然として国内経済には課題も残ります。外資系企業に対する締め付けが強化されるのでは、といった懸念の声も聞かれるようになりました。

もちろん、巨大な中国市場の魅力が色褪せたわけではありません。しかし、生産拠点として見た場合、以前よりも慎重な判断が必要になっているのは確かでしょう。

サプライチェーン強靭化という世界的潮流

そしてもう一つ、世界的な潮流として「サプライチェーン強靭化」の動きがあります。これは、新型コロナウイルスのパンデミックで、特定の国からの供給が滞ると世界中の生産活動が止まってしまう、という脆弱性が露呈したことへの反省から来ています。

経済安全保障、つまり自国の経済活動に必要な物資を安定的に確保するという観点からも、特定の国に頼りすぎるリスクを避け、生産・調達拠点を複数持つことの重要性が叫ばれています。

日本政府も、国内回帰や第三国への移転を支援する補助金制度などを設けており、国としてもサプライチェーンの多元化を後押ししています。

こうした流れの中で、「チャイナプラスワン」は、単に人件費の安い場所を探すという「コスト削減」戦略から、「リスクを分散し、安定供給を確保するための戦略」へと、その意味合いが変化・深化しているのです。

「プラスワン」候補地としての東南アジア:現状と課題

 

では、中国に次ぐ「プラスワン」の候補地として、なぜ東南アジア(ASEAN)が注目されるのでしょうか?

その魅力と、一方で考慮すべき課題を見ていきましょう。

東南アジア諸国の魅力:多様な選択肢と成長性

東南アジアと一口に言っても、国によってその特徴は様々です。

自社のニーズに合った国を選定していく必要があります。

ベトナム:

政治的な安定性と勤勉な国民性、積極的な外資誘致策が魅力です。多くの国とFTA(自由貿易協定、国同士が関税などをなくしたり減らしたりする取り決めのこと)を結んでおり、輸出拠点としてのメリットも大きいと言えます。特に北部は中国との連携もしやすく、製造業の集積が進んでいます。

タイ:

「東洋のデトロイト」とも呼ばれる自動車産業の集積が強みです。周辺国と比較してインフラが整備されており、産業の高度化を目指す「東部経済回廊(EEC)」政策も進んでいます。

インドネシア:

約2億7000万人という巨大な人口を抱え、国内市場としての潜在力が非常に大きいです。豊富な天然資源や労働力も魅力ですが、広大な国土ゆえのインフラ整備の遅れや、複雑な法制度が課題とされることもあります。

マレーシア:

電機・電子産業を中心に、比較的高い技術力を持つサプライヤーが集積しています。インフラも比較的整っており、英語が広く通じる点もビジネス上のメリットです。

フィリピン:

英語能力の高い豊富な労働力が魅力で、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業などが発展しています。製造業の受け皿としても期待されています。

カンボジア:

低廉な人件費が最大の魅力で、縫製業などを中心に投資が集まっています。近年は投資優遇策にも力を入れていますが、インフラや人材育成はこれからの課題です。

このように、各国に強みと弱みがあります。どの国が「ベスト」かは、進出する企業の業種や目的によって全く異なるのです。以下の記事も参考ください。

米中摩擦がもたらす東南アジアへの影響:機会と課題

米中摩擦は、東南アジアにとって「機会」と「課題」の両方をもたらしています。

機会としては、中国から生産拠点を移管しようとする企業の受け皿となり、外国からの直接投資(FDI)が増加している点が挙げられます。これにより、地域の経済成長が加速する期待があります。実際に、多くの日系企業も東南アジアへの投資を拡大する動きを見せています。

一方で、課題も少なくありません。急激な投資流入は、既存のインフラ(道路、港湾、電力など)や、熟練した技術者・管理者の不足といった問題を顕在化させています。また、米中の対立が深まる中で、どちらか一方につくことを迫られるような「板挟み」のリスクも懸念されます。

さらに、ASEAN域内でも企業誘致の競争は激化しており、各国が提示する優遇策なども目まぐるしく変化しています。

中小企業が注目すべきポイント:自社に合った国選びのヒント

では、中小企業が東南アジアへの進出を検討する際、どのような点に注目すれば良いのでしょうか?

  • 自社との適合性: まずは、自社の業種や製造プロセス、必要な部品調達網などを考慮し、どの国の産業構造やサプライチェーンが最も適しているかを見極めることが重要です。例えば、精密な部品加工が必要なら技術力のあるサプライヤーが多い国、労働集約的な工程なら人件費の安い国、といった具合です。
  • コスト以外の要素: 人件費の安さだけに目を向けるのは危険です。物流インフラの質とコスト、電力供給の安定性、法制度や税制の透明性、知的財産権の保護状況なども、長期的な事業運営の成否を左右する重要な要素です。
  • FTA/EPAの活用: 日本が各国と結んでいるFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を上手く活用すれば、関税の削減・撤廃といったメリットを受けられます。特にRCEP(地域的な包括的経済連携)やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)といった広域的な枠組みは、サプライチェーン構築において重要な要素となります。
  • デジタルインフラ: 今日のビジネスにおいて、インターネット環境は生命線です。各国の通信インフラの整備状況やコスト、そして現地でのデジタルツールの活用しやすさも、事前に確認しておきたいポイントです。特に、日本から遠隔で管理する場面などを考えると、この点は見過ごせません。

情報収集には、JETRO(日本貿易振興機構)や現地の日本商工会議所、信頼できるコンサルタントなどを活用することをお勧めします。

中小企業が取るべき戦略:「チャイナプラスワン」を成功させるために

ここまで見てきた状況を踏まえ、中小企業は「チャイナプラスワン」戦略をどのように進めていけば良いのでしょうか?

成功のための3つの視点をご紹介します。

①単なるコスト削減ではない:リスク分散と市場開拓の複眼的視点

まず大切なのは、「チャイナプラスワン」を単なるコスト削減策として捉えないことです。「脱中国」を急ぐのではなく、依然として巨大で魅力的な中国市場との関係は維持しつつ、リスクを分散し、サプライチェーンをより強靭にするという視点を持つことが重要です。

さらに、東南アジアは生産拠点としてだけでなく、成長著しい消費市場としての側面も持っています。将来的に、現地市場や周辺国への販売拠点としての可能性も視野に入れることで、戦略はより複眼的になります。

すべてを一気に移転するのは、中小企業にとって負担が大きいかもしれません。まずは、特定の工程だけを移管する、あるいはテスト的に小規模な拠点を設けるなど、段階的なアプローチを検討するのも有効な方法です。

②デジタル化の活用:効率的な拠点管理と現地連携

物理的に離れた拠点を効率的に管理・運営するには、デジタル技術の活用が不可欠です。これは、私たち(オウンドメディア運営者)が特に強調したい点でもあります。

サプライチェーン全体を可視化するSCM(サプライチェーン・マネジメント)システム、現地スタッフとの円滑なコミュニケーションを図るためのWeb会議システムやビジネスチャット、プロジェクトの進捗を共有するツールなどを導入することで、距離のハンデを乗り越えることができます。

また、現地市場向けの多言語ウェブサイトを早期に構築し、現地の検索エンジン対策(SEO)やSNSを活用したデジタルマーケティングに取り組むことで、低コストでテストマーケティングを行ったり、現地の潜在顧客やパートナー候補にアプローチしたりすることも可能です。

海外進出の初期段階だからこそ、こうしたWeb・デジタル戦略を組み込むことが、後々の成功の鍵を握ると考えられます。

③最新情報の収集と信頼できるパートナー選定の重要性

最後に、そして最も重要なことの一つが、継続的な情報収集信頼できるパートナー選びです。

東南アジア各国の法制度、税制、投資環境、労働市場などは、目まぐるしく変化します。JETROや現地の日本商工会議所、業界団体、信頼できるニュースソースなどを通じて、常に最新の情報をキャッチアップする努力が欠かせません。特に、米中関係の変化が各国の政策に与える影響は注視が必要です。

そして、現地での事業展開をスムーズに進めるためには、現地の事情に精通した信頼できるパートナーの存在が不可欠です。進出前のFS(実行可能性調査)をサポートしてくれるコンサルタント、複雑な法務・会計手続きを任せられる専門家、物流や人材採用のパートナーなど、慎重に選定する必要があります。

筆者の経験からも、良いパートナーとの出会いが、海外事業の成否を大きく左右すると実感しています。口コミや紹介だけに頼らず、複数の候補を比較検討し、自社との相性を見極めることが重要です。

まとめ:変化に備え、情報収集と早期の意思決定が勝負を分ける

さて、ここまで「チャイナプラスワン」の有効性や東南アジアの現状、そして中小企業が取るべき戦略について見てきました。

要点をまとめると、

  • 米中対立の長期化やサプライチェーン強靭化の流れを受け、「チャイナプラスワン」は単なるコスト削減ではなく、リスク分散と安定供給確保のための重要な戦略として、依然として有効です。
  • ただし、移転先候補となる東南アジアは国ごとに状況が大きく異なるため、自社の目的や状況に合わせて最適な国・地域を慎重に選ぶ必要があります。
  • 成功のためには、リスク分散と市場開拓の複眼的な視点を持ち、デジタル技術を積極的に活用し、最新情報の収集と信頼できるパートナー選びを怠らないことが不可欠です。

最も重要なメッセージは、国際情勢の変化は今後も続くと考えられ、サプライチェーンの見直しは一過性のイベントではなく、継続的に取り組むべき経営課題であるということです。変化に柔軟に対応していくためには、早期からの情報収集と検討開始が、これまで以上に重要になっています。

【情報の鮮度と更新について】本記事で解説した内容は、2025年4月15日時点の情報に基づいています。ご案内の通り、特に米中関係やそれに関連する各国の政策は流動的であり、今後の動向次第で状況は変わり得ます。

この記事が、皆様の海外戦略検討の一助となれば幸いです。

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